ソフィアはこうして始まった
著者: | 応用言語学者・教育心理学者 |
実は、ソフィア外語学院は2020年で35年目に入ります。一口に35年と言っても、大変長い年月でした。その間、ソフィア外語学院は様々な変化を経てきました。
ご存じのように、ソフィア外語学院は、私が創立した学校ですが、その創立の動機は極めて単純明快でした。「日本の英語教育を改革したい。そのための最短距離は何か?」という問題に対する解答が、ソフィア外語学院だったのです。他には、大学で英語教育に関する授業を担当するという事も選択肢としてはありましたが、それは、英語教育の改革という目的のためには最も効果的な方法とは言えず、また、回り道に思えたのでやめました。
簡単に言えば、そういう方法で実効をあげるには、学校教育の現場に就職できる能力を持った学生が十分な数いる一流大学に奉職する機会を長期間待たなくてはならず、そんなことをやっていたら、老人になってしまうということです。また、どうしてもそういう仕事をしたい場合は、老人になってからでも可能だという考えもありました。それに、私が教壇で英語教育の改革を訴えたところで、職業生命をかけてそれに取り組みたいという学生が出現する可能性は、一流大学であっても、ゼロに近いのです。
実際、教育を改革するという事業は、職業生命をかけることになるのです。それほどまでに改革という事業は、世の中では困難なのです。それはちょうど政治改革の必要性はどんな政治家でも認めますが、それを本当に実行しようという政治家はほとんどおらず、断行すれば、政治生命に関わるのと同じ事です。
かくして、ソフィア外語学院は英語教育学(応用言語学)の専門家が創立するという極めてユニークな学校となりました。恐らく、他には例がないでしょう。
そしてこのような背景の下にできた学校なので、「正しい教育方法を妥協することなく実行し、一切迎合(げいごう)しない」という伝統が生まれました。例えば、本学院のテスト。これは、実力を追跡するためのテストですが、こんなテストをしているのは、全国的にも他に例を知りません。
なぜ他ではやらないかと言えば、教育効果が得点に直接表れるので、学校側としては、やりたくないからです。つまり、「生徒の成績」であると同時に「学校(すなわち、教師)の成績」にもなってしまうからです。しかし、教育効果を正確に測定せずに、効果的な教育ができるわけがありません。だから、本学院では、あえてそういうテストを行っているのです。
また、教育方法、すなわち、教授法においても同様で、「受験を突破するために実用英語を教える」というのは、科学的には全く理にかなったことですが、世間一般ではそうは考えられていないので、全く無鉄砲な試みと言えます。つまり「世間の人が考えていることを、商品にして売る」という商売の原則に反しているわけです。
しかし、本学院は、あえてこれに挑戦してきました。それは、一つには、学校英語に苦労させられたという私自身の経験があったからで、これからの若い人にはそういう苦労はさせたくないからです。また、学者として、科学的事実に反するでたらめな教育は許し難いという事もあります。
本学院は、この様な事情で創立され、発展してきた学校ですが、これからもみなさんのご理解が得られれば幸いであります。