教授技能と専門的知識と教養の重要性

著者:応用言語学者・教育心理学者
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同じように教育を受けていても、その成果が違うのは、ご存じの通りです。ほとんど何も学習の成果が得られなかった生徒もいれば、目標を遙かに超えたレベルまで到達する生徒もいるのは事実です。では、そうした個人差が発生するのは、なぜなのか。それを研究して明らかにするのが、一般には、教育心理学であり、英語教育の分野では、応用言語学です。

英語教育の場合、教師の側の要因として、教育成果に大きな影響を与えるのが、教授法ですが、その他に、教師の教授技能、英語や英語教育に関する専門知識、一般教養などが重要です。後者は、簡単に言えば、教師の実力と言ってもいいでしょう。

最近の研究により、この後者の要因が極めて重要であることが、明らかになってきました。同じ大卒の教師でも、教授法について研修を受けたことがある教師と研修を受けていない教師では、教育効果に実に3倍もの違いがあることがわかったのです。

実際、私の経験を振り返ってみても、同じ様な教授法に従って教えていても、教師によって教育効果に大きな差が出ることは、確かです。私が米国の大学で教えたときも、同じ教材を使い、同じ宿題を出しているにも関わらず、一番効果の低かった先生のクラスでは、平均点が約60点、以前からそこで教えていた先生で一番評判の良い先生のクラスでは、平均点が約80点でした。手前味噌になりますが、私の担当したクラスは、平均点が92点でした。私のクラスがあまりに飛び抜けて良かったので、大変話題になったのを覚えています。確か、ほぼ全員が90点以上で、それ以下の生徒は、80点が一人、60点台の学生が一人で、100点を取った学生も3人ほどいました。

しかし、こうした差が本当に教師の実力によるのかどうかという研究は、なかなか実施が難しい点もあり、私の知る限り、過去には研究されていませんでした。しかし、今回の研究により、数量的に明白な違いが出たことで、経験により何となく知られていたことが、明白になったと言えます。

そこで、この研究が発表されると直ちに、本学院では、研修をいっそう強化することを決定しました。元々、本学院では、研修をかなり徹底して行ってきたのですが、これをさらに徹底強化していく方針としたのです。

具体的に申しますと、研修は、英語や英語教育にとどまらず、一般教養全体に及び、例えば、社会問題や経済、自然科学、社会科学などあらゆる方面の研修を行います。これにより、本学院の講師が、本質的に大幅にレベルアップすることを目指したいと考えています。

学ぶ側の要因も重大な影響がありますが、教育は、やはり、教える人によるという面が少なくないと言うのは事実です。いわば、教育は、学ぶ人と教える人の出会いによるとも言えます。私自身、過去、何人かの優れた先生に出会えたからこそ、今日の自分があるとも言えます。つまり、教育の最も大切な部分というのは、個々の学習項目がわかったとか、わからないとか言うだけのことではなく、どうやってそれを教えていくのか、また、その他にも、ものの考え方、学問に対する見方など、全人格的なものだと思います。

私たちソフィア外語学院の講師は、本学院で生徒と教師のより良い出会いが生まれるよう、全力を尽くして頑張って行きたいと思います。今後も、本学院の教育理念をご理解下さいますよう、よろしくお願い申しあげます。